暑い夏こそ「冬に暖かい家」の本領発揮!

これから暑い夏本番を迎える日本。
昨今は室内での “熱中症リスク” が頻繁に話題にのぼるようになっている。
今月は「冬でも暖かい家」が “夏の猛暑にも強い家” であることについて紹介したい。

 

「断熱」に優れた家は、文字通り「熱」を「断つ」ことができる

高断熱・高気密の住まいは冬には強いが、夏には弱いのではないか?という声はよく聞かれる。
「高断熱・高気密」=「暖かい」というイメージが先行しているため、熱い夏にはそれこそ “熱の逃げ場所もなく家の中に熱がこもってしまう” のを連想するからではないだろうか。
しかし実際は、文字通り「熱」「絶つ」のである。
外気温が寒くても室内への影響がほとんど無いのと同様、外が猛暑でも「その熱を家の中には入れない」のだ。

 

隙間が多く断熱・気密性能の低い家は、涼しいのか?

隙間が多く気密性の低い家は、風が循環し、暑い夏には良さそうに思えなくもない。
が、実際は「外の熱」がそのまま家に入り込むため、外気の影響をもろに受け、熱い室内になってしまう。
一方、断熱・気密性能の高い家は外の暑さの影響を受けにくいので、エアコンなどの冷房効率も高く、光熱費のコスト削減効果も高い。(いわゆる魔法瓶効果
一見涼しそうな “隙間の多い家” では、エアコンをつけてもどんどん冷たい空気が逃げてしまうので、光熱費がかさむ原因にもなるのである。
「高気密・高断熱住宅」が熱い夏にも強いと言われるのはそのような理由からである。

魔法瓶のように外部の温度の影響を受けにくい

 

 

では、高断熱・高気密住宅の場合はなんの対策も要らないのか?

高断熱・高気密住宅であれば冬も夏も無敵なのか?といえば、そうではない。
高断熱・高気密住宅には「室内の熱がこもりやすい」という点があることは否めない。
その特性を理解しつつ“魔法瓶効果”を最大限に活かすには、ちょっとした工夫が必要。

 

◆「遮熱」を併用することでより効果的に!

外の温度が伝わりにくい高断熱・高気密住宅だが、太陽の光が燦々と差し込むと、いくら窓ガラスの性能が上がっているとはいえ、その「日射熱」で室内温度はどうしても上がってしまう。
逆に「日射を入れない」工夫次第で、室内温度の上昇を防ぐことができる。
“日射遮蔽”という言葉が専門的に語られるが、特に効果が高いのは、窓の外で日射をカットする方法である。
「深い庇」をもった建物であれば、それだけでもだいぶ日射熱を防ぐことができるが、「すだれ」や「よしず」、「外付けのブラインド」や「オーニング」など、窓に日射が当たらないようにする方法が効果的だ。
グリーンカーテンなども同様の効果をもたらしてくれる。

   
昔ながらの知恵「よしず」    癒やし効果もプラス「グリーンカーテン」

 

「通風」を意識して生活に取り入れると、より快適に!

「遮熱」の工夫をしても、日射熱をゼロにすることは不可能だし、家の中から発生する熱もある。そのために、“熱を逃がす”ための「通風」も重要。
日中の熱い時間帯に風を入れるのは逆効果なので、外気温がそれほど高くない朝方や夜に、涼しい風を家の中に通してあげて、こもった熱を外に出してあげることで、より快適な室内を保つことができる。


涼しい時間帯に室内の温まった空気を逃がすことも有効

 


北から南へ、下から上へ風のルートを確保することがポイント

 

 

暑い夏にも強い「高断熱・高気密住宅」。
ただしその効果を最大限に活かすためには、特性を理解したちょっとの工夫が必要。

日射熱を入れない「遮熱」と、こもった熱を逃がす「通風」の2つを意識することで、より快適な夏を過ごすことができるだろう。
ぜひ、今日からでも試してみてはいかがだろうか。

暖かい住まいを実現するために Vol.3 ~ 非破壊断熱という選択肢 ~

 

前回の記事では、住まいをゾーンで捉えて断熱施工する「ゾーン断熱」という考え方を紹介した。
今回は、その「ゾーン断熱」施工を行う際にも検討できる「非破壊断熱工事」について触れたい。

 

床、壁、天井を壊さずに断熱性能を付加できる「非破壊断熱工事」

“非破壊断熱”というとイメージがつきにくいかもしれないが、 いわゆる「床や壁、天井を壊さずに施工する」断熱方法のことである。 家全体の間取り変更を含めてリノベーションを行う際は、壁の中に断熱材を充填する「充填断熱」が一般的である。
床や壁を壊すことになるので、その時にしっかりと内側に断熱材を充填するのだ。

 ← 充填断熱施工写真

 

しかし、間取りの変更はしないけれども断熱性能は上げたいという人や、前回の記事で紹介した「ゾーン断熱」を行いたいという人には「非破壊断熱工事」という選択肢もある。

「床下の断熱施工」や「天井裏に断熱材を吹き込むような施工」は、 これまでも比較的容易にできる断熱工事として知られているが、それらも「非破壊断熱」のひとつである。

 

壁の非破壊断熱 <断熱ボード>

前述のとおり、床の断熱については下からの断熱材吹付けや断熱パネルの施工、また天井については天井裏への断熱材ブローイングなどが一般的である。では壁については、どのような手段があるのだろうか?

壁の非破壊断熱工事については、「断熱ボード」を既存の壁の内側に張るという施工方法がある。イメージとしては、外壁の外側に断熱材を張る「外断熱」の逆パターンとも言えようか。 建材メーカー各社も性能向上への探求を進めており、断熱施工の一つの手法として確立されつつある。

          

   ↑ 既存の壁に断熱ボードが貼っている状態      ↑ 断熱ボードの断面               

 

メリットは、工事規模の軽減とそれに伴う施工費の縮小が挙げられるだろう。 なんと言っても既存の壁を壊さずに済むことで、住みながらの工事がよりしやすくなること。 また、解体工事の必要がなく、施工費を抑えることができるという点が大きい。 わかりやすいデメリットとしては、室内空間が狭くなる点か。 既存壁の内側に施工することになるので、断熱ボードの厚み分だけ室内が狭くなる。 ボードの厚みが3.5センチほどなので、その分ずつ壁が内側に入ってくるイメージだ。

部分断熱やゾーン断熱の施工を検討する際には、メリットとデメリットをしっかりと考慮しながら、 この非破壊断熱施工も検討のひとつに入れてみてはいかがだろう。

 

開口部の断熱性能向上も合わせて検討すべき

上記の非破壊断熱工事をする際には、やはりサッシなどの開口部の断熱性能も合わせて高める必要がある。 充填断熱を行う場合でも、非破壊断熱を行う場合でも、室内に極端に断熱性能が低い箇所が生まれることは望ましくない。 逃げられなくなった熱が一気に性能の低い箇所に集まり、壁内結露などの原因にもなり得るからだ。 非破壊断熱工事を行う際には、施工の相性も良い「内窓」の設置も合わせて検討することをオススメする。

  ← 内窓施工イメージ

 

 

比較的気軽に断熱性能を高めることができる「非破壊断熱工事」だが、 室内の断熱性能のバランスを考えずに安易に施工するのは注意が必要だ。 既存の断熱材の性能をしっかりと把握することと、気流止めの確かな設計など、 断熱気密の理論をわきまえた上での施工は絶対条件となる。

前回の記事の続きとなるが、施工範囲の検討と合わせて、 その施工方法についても実績のあるプロに相談しながら計画を進めてみてはいかがだろう。

暖かい住まいを実現するために Vol.2 ~ 家全体を改修しないと意味がない? ~

前回の記事では、なぜ住まいの断熱化が必要なのか?その目的から改めて確認し、「居住性・快適性の向上」「省エネルギー」「表面結露の防止」という3つの目的を共有した。

では、自分たちが今住む家を暖かく改善したいと考えた時、具体的にどのような点から検討を進めていけば良いのだろうか。 

 

大規模リフォームじゃないと意味がない?

 

家中どこにいても均一に暖かい住まいに改善するとしたら、やはり一階から二階までのすべての断熱改修を行う、いわゆる“フルリノベーション”が必要にる。それでも、建て替えよりは費用が抑えられることと、箇所によっては断熱“補強”で十分な結果が見込める部分もあるため、建て替えよりもフルリノベーションを選択するユーザはこれからも増えていくことだろう。

とはいえ、誰もが簡単に検討できるレベルの費用でないことは事実。家全体の改修以外の選択肢はないのだろうか。

 

 

ゾーン断熱という考え方

一般的にリフォーム規模に応じて、「全体改修(フルリノベーション)」、「部分改修」と分類することが多いが、断熱補強の観点においてはその中間である「ゾーン(エリア)改修」という考え方をとることもできる。

改修規模(=費用規模)でいうと、小さい順に、①「部分改修」→②「ゾーン(エリア)改修」→③「全体改修」となる。性能向上のレベルとしては、もちろん逆の順序となる。

①の部分改修とは、「サッシを断熱サッシに交換する」、「サッシに内窓を取り付ける」、「床下部分に断熱を施す」など、短工期で行えるリフォームがそのイメージである。③の全体改修は、骨組みまで解体して全体の断熱・気密をしっかりとやり直すところからリフォームを行うイメージ。

そして、あまり耳慣れないかと思われるのが、②の「ゾーン断熱改修」であろう。前述のとおり、家全体が均一で暖かい室温になるよう改善するためには、大規模なリフォームが必要にはなる。しかし、例えば、「子ども達が巣立った我が家で、2階を使うことはほとんどない」、というような場合、「1階だけで良いから暖かく快適な空間にしたい」というニーズも生まれてくる。そんな時に検討できるのが、「ゾーン断熱」という考え方だ。

ライフスタイルの多様化にも合わせやすい、コスパの良い選択肢といえる。

 

 

ゾーンの捉え方が肝!

しかし、ゾーン改修は良いことばかりではない。プランニングが甘いとリスクが大きくなる考え方でもあるのだ。

  • 「浴室・洗面室」だけをゾーンとして捉えて施工することは良いプランなのか?
  • 「LDK」だけを断熱改修の対象ゾーンにした場合はどうか?
  • 廊下までやろうとなった時に、玄関の寒さはどうする?
  • 吹き抜けがあった時はどのように考える?

このような検討をすること無しに、単純に施工エリアだけを決めることは危険である。

ゾーンで断熱改修をした場合は、基本的にはそれ以外の場所との断熱性能の差が激しくなる。つまりは、改修前よりもゾーン内外のヒートショックリスクを高めることにもなり得るのである。また、非断熱エリアの表面結露の誘発リスクも高まるだろう。

リスクを考慮した上で、ゾーン断熱のメリットを生かしたプランを練ることが重要なポイントだ。

また、換気計画や暖房計画を抜きにしては考えられない。これらをきちんとプランニングすることが、まさにゾーン断熱改修の肝となる。

 

 

身体へ極力負担をかけない暖かな空間を実現するためには、建て替えやフルリノベーションじゃなければ意味がないのでは、と諦める必要は全くない。

今の生活パターンをしっかりと見つめ、ゾーン断熱というアイデアも頭におきながら、実現可能な計画を信頼できるプロと一緒に検討していくことをお勧めしたい。

暖かい住まいを実現するために Vol.1 ~「温度ムラ」が大敵!~

これまで、暖かい住まいがどれだけ住む人の健康に良いかという点を様々な先生方の研究結果を元に紹介してきた。
では、今、寒い家に住んでいる人はどうやって家を暖かくすれば良いのか。


「技術編」としてこれから3回にわたって、具体的な考え方や対策のポイントなどを取り上げる。
今回はまず、暖かな家、その基本的な考え方について改めて紹介したい。



暖房の意味とその効果

まずてっとり早く家を暖かくするために頭に浮かぶことは「暖房」かもしれない。
その「暖房」は本来は部屋全体を暖めることを指し、室温と無関係に人を暖める「採暖」とは区別しなければならない。
部屋全体が暖かくないと、こたつに入っていても背中側が低温にさらされていたり、台所に立ったりトイレに立ったりする度に急激な温度変化のショックにより体はストレスを受けることになる。

温度ムラの無い室内環境がいかに体に優しいかは、これまでの記事でも多く紹介してきたので、ここでは割愛したい。
問題なのは、いくら採暖器具を駆使しても、隙間だらけの家では部屋全体を均質に暖めることは難しく、ムラのある室温環境しか作れないということである。

やはり、住まいの断熱化が重要になってくるのだ。



住まいの断熱化のポイント

断熱の目的は大きく3つに分けられる。
1つ目が「居住性・快適性の向上」、2つ目が「省エネルギー」、3つ目が「表面結露(※)の防止」である。この3つが“断熱の効果”と言い換えることもできるだろう。

そして、断熱施工の難易度に関して言うと、「①表面結露の防止」、「②省エネルギー」、「③居住性・快適性の向上」の順に高くなる。
①から③にいくに従って、断熱材はより厚いものが必要となり、また、しっかりとした施工が求められることになる。

断熱化の目的とすべきは「居住性・快適性の向上」であり、そこに照準を合わせると、「省エネ」だったり「結露防止」などはおまけに付いてくるもの、と言っても良いだろう。


※表面結露/窓ガラスやサッシ、壁などの表面に発生する結露。水蒸気を含んだ暖かい空気が温度の低い建材に触れることでおこる。


高断熱の家と低断熱の家のわかりやすい違いとは

高断熱の家とは、一言で言えばムラのない室温が実現できる家だ。
ムラのない室温は、住む人の「体感温度」に密接に関係している。

下のイラストを見て欲しい。


  

左が低断熱の家。右が高断熱の家である。
同じ「室温20℃」でも、低断熱の家は外部に接する天井や壁、床の表面温度が低く、「体感温度」に大きな違いが生まれるのだ。
結果、低断熱の家では「採暖」以外の「暖」がとれない、ということになるのだ。


暖房機器に大きな予算をつぎ込む前に、まずは家の断熱化について考えてみることをお勧めしたい。
その際ポイントとなるのは、おまけとして付いてくる「省エネ」のためのリフォームではなく、「健康・快適」を実現するための断熱リフォームを検討することではないだろうか。


※参考資料 / 牧子 芳正 『住宅読本』(2005、北洲総合研究所)

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