住宅の24時間換気設備の効果発揮にはメンテナンスが重要

健康で快適な室内環境を維持する上で、室内の空気を新鮮な外気と入れ替える「換気」はとても大切だ。
コロナ禍では、感染症を防止する観点からもその重要性が注目された。
日本では約20年前に、全ての建築物への24時間換気設備の設置が義務化されている。
換気設備がその効果を発揮するには、日頃のメンテナンスが肝心。
ところが、6割もの人が「一度も掃除したことがない」との調査結果もある。
大掃除や換気に対する意識が高まる冬に、改めて換気設備のメンテナンスの重要性を確認したい。

 

24時間換気設備の義務化のきっかけはシックハウス対策

当時社会問題になっていた「シックハウス症候群(※)」対策として2003年7月1日、改正建築基準法が施行され、原則として全ての建築物に24時間換気設備(機械換気設備)の設置が義務付けられた。

 

これにより、住宅の場合、換気回数が0.5回/h以上となる換気設備の設置が必要とされた。

つまり、1時間で部屋の空気の半分が入れ替わることになる。

 

建物の気密性能の向上を背景に、室内の空気をきれいに保つため、住宅全体の「計画的な換気」が求められ、住宅のつくり手はそれを考えた設備設計に取り組んでいる。

 

計画換気のイメージ

 

※建材や家具などから発散される化学物質が原因と見られる、のどの痛みや吐き気、頭痛などの健康被害

 

 

換気による効果はシックハウス対策だけにとどまらない

この3年間、世界中の人々を悩ませている新型コロナウイルスなどの感染症対策でも、換気の重要性が繰り返し強調されている。

 

そもそも、室内の空気やホコリの滞留を回避し、カビやダニの発生を抑え、生活臭や空気の汚れを改善して、健康・快適な室内環境を整える上で、しっかりした換気は欠かせない。

 

住宅の断熱性能・気密性能が向上した現在では、なおさら必要性が増している。

 

換気設備の掃除は「一度もない」が多数派!?

2022年8月、三菱電機株式会社が衝撃的な調査結果(※)を発表した。
換気設備の義務化から1年後の2004年以降に建てられた家に5年以上暮らす全国の20~60代の男女500人を対象にした調査で、24時間換気システムを「掃除したことがない」との回答が60.0%にのぼったという。

掃除をしたことがある人でも、その頻度は「1年に1回以下」が39.5%を占め、満足に掃除されていない実態が浮き彫りになった。

さらに、24時間換気システムが自宅に設置されていることを「知らない」が39.4%。
知っていても「24時間稼働させていない」が44.0%にのぼり、せっかくの設備を活用できていない人が多いことも明らかになった。

これでは換気の効果が著しく損なわれ、室内環境の悪化を招いてしまう。

※「室内の空気環境を整える『24時間換気システム』一度も掃除をしたことがないという人が6割にも!」(2022年8月4日、三菱電機換気ソリューションPR事務局)

 

掃除によって換気量が2.4倍に

換気設備のメンテナンスを怠ると、住宅への影響や換気量の変化はどうなるのだろうか。
北海道住宅新聞の記事(※)は、札幌の設備会社による築約20年の住宅の換気設備の掃除に同行し、その実態を伝えている。

記事によると、住まい手は一度も掃除をしたことがないどころか、「そもそも、どこに設置されているのかも知らなかった」という。
しかし、内部結露を主因とする外壁の劣化をきっかけに、その原因が換気不足によるものと判明した。

掃除当日の測定では、4カ所ある排気グリルのうち2カ所は換気量ゼロ。
もう1カ所も換気量が「ごくわずか」しかなかった。

掃除すること2時間。
「住宅全体の換気量を測定すると、清掃前の51.2㎥/hから124.0㎥/hまで回復していた」という。
住まい手の「空気の流れを感じる」との感想から、住宅全体の「計画的な換気」がいかに大切か伝わってくる。

※「換気性能は掃除が生命線」(2022年11月25日掲載)

 

定期的なお手入れで空気環境を健康・快適に

寒い冬はついつい換気を避けたくなるが、24時間換気設備を止めてしまうと、空気の入れ替えが正常になされず、結露やカビ、ダニ、感染症などのリスクに脅かされることになる。
定期的にお手入れしてフィルターが詰らないようにするなど、メンテナンスに気を配り、室内の空気環境を健康で快適に保ちたい。

 

冬を健康・快適に過ごすための断熱改修のコツとは

「寒い冬でも健康・快適に過ごせるようにしたい」
そうは思っても、いざリフォームを考えようとすると、どこから改修したらいいのか、どんなことに気を付ければいいか迷ってしまう人は少なくないのではないか。
そこで、断熱改修の現場を知り抜いた北洲リフォームの遠藤光栄・一級建築士に、断熱改修のコツを聞いた。

 

■最も熱が逃げる「窓」から断熱改修を

 

―住宅のどの部分から断熱改修を考えたらいいのでしょうか。

 

遠藤:まずは熱損失が最も大きい「窓」から改修を考えると良いでしょう。
窓は住宅の熱の出入りが最も大きく、冬場では室内の熱の58%が外に逃げてしまいます。
逆に夏場は外の熱が窓を通して入り、室内の熱の73%に達します。
窓の断熱性能を高めることは、室内環境を向上させるのにとても重要です。

■安易な「窓だけ」改修は「身代わり結露」の原因に

―窓を改修すればひと安心ですか。

遠藤:残念ながら、「窓だけ」の安易な改修は、もともとの躯体の断熱性能によっては「身代わり結露」という新たな問題のリスク要因になります。
窓の断熱性能が、壁や床・天井の断熱性能を上回ってしまうと、そちらのほうが表面結露を起こしやすくなってしまいます。
部分的にでも断熱性能が上がれば、暖房効果も高まり室温が上がりますが、その反面、建物全体の断熱・気密が徹底されていない建物では、壁内への室内空気の移動により壁内結露の可能性も高くなってしまいます。

 

―壁や床に断熱材を入れていても防げないのですか。

遠藤:在来工法(木造軸組構法)の問題点ですが、築30年以上の建物や根太工法の場合は、壁と床や天井との取合い(接合部分)に隙間があるため壁内気流が発生します。
断熱材を入れても、繊維系断熱材であれば内部を気流が通過してしまうため、所定の断熱性能を発揮することができません。
間仕切り壁においても、上下に隙間があれば床下から小屋裏まで煙突状態となり、無断熱壁と同じ状況になってしまいます。

 

■「気流止め改修」で冷気をシャットアウト

―どうしたら問題を解消できますか。

遠藤:壁と床や天井との取合いに隙間ができないように、「気流止め改修」を施して冷気の流入を防ぎます。
気流止めには、乾燥木材や気密シート、圧縮グラスウールの気流止め製品を使うなど、いくつかの方法があります。床下から発砲ウレタン吹付断熱を全面施工することでも一定の効果が期待できます。こちらについても、安易な改修は要注意。
まずは、雨漏れや壁内結露による腐朽・蟻害などの劣化がないかどうか、現在の状態を確認することがとても大切です。

 

―建物の現状確認から始めればいいのですね。

遠藤:建物の構造、断熱や劣化の状況によって改修計画が異なってきます。
既存の建物の状態をしっかり調査した上で、必要な改修を考えることが大事です。

まずは既存の建物の状態をきちんと調査するところから

 

■断熱設計の3つの基本性能を確保する

―断熱改修のポイントは何でしょう。

遠藤:断熱設計の3つの基本性能「断熱性能」「防露性能」「気密性能」を確保することです。
さまざまな材料から作られている壁や床が、適切な断面構成になっているかが断熱性能の鍵になります。

 

3つの基本性能に関わる断面構成の層として、「断熱層」「防湿層」「気密層」「防風層」「通気層」の5つがあります。
この5つに加えて、断熱層内の気流や湿気の侵入を防ぎ、室内と室外の隙間をなくすために気流止めを設けることで、住宅全体を覆うように断熱層・防湿層・気密層を連続させ、断熱性能を向上させることができます。

 

■断熱改修の範囲はどこまで?

―住宅全体の断熱改修が理想的ですがハードルが高いですよね。

遠藤:費用や工期などが心配になりますし、ご家庭の状況によって断熱改修が必要な場所も異なると思います。
実際、子どもが巣立ち、夫婦2人のセカンドライフを考えてリフォームする方が多いです。

前真之・東京大学大学院准教授監修の「健康で快適な暮らしのためのリフォーム読本」(暮らし創造研究会発行)は、費用や工期などの不安を解消しつつ実情に応じた断熱改修の4つのプランを提示しています。

では、実際に住宅のどの部分の改修を考えればいいのか。
必須なのは生活ゾーン(LDK+浴室や洗面などの水回り)。
これに寝室も加えればベストでしょう。

生活ゾーンは断熱改修で温度差をなくし、ヒートショック防止へ

 

■適切な暖房と計画換気を

―改修後に注意すべきことは何ですか。

遠藤:室内の空気を燃焼に使い、その空気を室内に放出する開放型の暖房器具(石油ストーブや石油ファンヒーターなど)は、酸欠や一酸化炭素(CO)中毒の危険性がありますし、水蒸気が発生するため結露の原因になってしまいます。

また、計画換気システムは止めずに24時間連続運転してください。
これを止めてしまうと、室内の空気の汚れや結露の発生につながってしまいます。

 

■健康・快適な室内環境のカギは作用温度

―最後に、健康・快適な室内環境のために知っておくべきことは。

遠藤:健康で快適な室内環境には、作用温度(体感温度)を整えることが肝心です。
作用温度は「(表面温度+室内温度)÷2」で求められます。
※厳密には壁・床・天井などの表面温度(放射温度)の平均値

表面温度を高く保たなければ、どんなに部屋を暖めても作用温度は上がらず、暖かさを感じられません。

快適性に関する国際基準(ISO7730)では、頭から足もとまでの上下温度差が2℃以内であれば快適、4℃以内が許容限界とされています。

つまり、健康を保ち快適な住宅の実現には、断熱性能の向上が重要になります。
住宅の状況にふさわしい断熱改修によって、どんなに外が寒くても快適な我が家でのびのびと楽しい時間を過ごしていただきたいと思います。

 

加湿の工夫や調湿建材で「過乾燥」対策を

日本の冬の悩みといえば、結露(「結露と湿度の関係を知り、冬の悩みを解消するには」2022年9月30日掲載)だけでなく、「乾燥」も大きな問題だ。
乾燥による目・喉・肌などのトラブルに悩む人は多く、インフルエンザの予防でも乾燥対策が呼びかけられている。
適度な加湿が大事だが、注意すべきことは多い。
そうした中で、乾燥を軽減できる調湿建材が注目されている。

 

■室温アップが乾燥を増幅

冬の寒さが厳しい東北地方。
宮城県仙台市では、5~10月の相対湿度(月ごとの平年値)は70%台で推移しているが、冬の訪れとともに乾燥が強まる。
11月以降は60%台となり、3月には1年間で最も低い61%にまで下がる。

しかし、東京の冬の相対湿度(同)は50%台で推移しており、気象庁は「乾燥した空気」という表現を「湿度が低い空気で、目安として湿度がおよそ50%未満の状態」と説明している。
湿度60%台は、それほどひどい乾燥とは言えないようだ。
ところが、室内を暖めることで湿度はグンと下がる。
例えば外気温が2℃、湿度60%の場合、これを室内温度20℃になるように暖めると湿度は20%まで低下する。

 

■体感温度の低さがさらなる乾燥を呼ぶ

室温を考えるとき重要なのは「表面温度」「体感温度(作用温度ともいう)」だ。

 

表面温度とは室内の壁や床、窓などの温度のことで、断熱性能が低い住宅では外気の影響を受けて低くなる。
体感温度は文字通りの意味で、「(室内温度+表面温度※)÷2」で算出できる。

※厳密には表面温度(放射温度)の平均値である平均放射温度

 

理想的なのは「室温=表面温度」の状態。
表面温度を高く保つには断熱が肝心だが、断熱性能が低いと表面温度の低さから暖かさが体感できず、がんばって室温を上げることになる。
室温を上げれば上げるほど相対湿度は下がり、肌や粘膜が乾燥する悪循環に陥ってしまう。

 

高断熱の住宅でも、水分の出ない暖房器具であるエアコンの使用はやはり乾燥を助長する。

 

■加湿を工夫し、日常生活で出る水分を活用

乾燥によるトラブルを防ぎ、インフルエンザなどの感染リスクを低減するには、適度な湿度の保持が大切になる。
厚生労働省はインフルエンザ予防にとって、「室内を適切な湿度(50~60%)に保つことも効果的」としている。

 

加湿には日常生活で発生する水分が活用できる。
4人家族を想定した場合、室内干しで約3ℓ、入浴で約2ℓの水分が発生する。
浴槽のお湯を一晩ためておけば約3ℓの水分が発生するため、浴槽のふたと浴室の扉を開け放つ方法もある。

 

それでも乾燥する場合は加湿器だ。
ハイブリッド式や気化式などのタイプがあるが、衛生面や消費電力、暖房器具との併用の仕方など考慮すべき点があることに留意したい。

 

ただし、加湿の際は住宅内の温度をできるだけ均一に保つように注意したい。
湿気は寒い場所に移動するため、カビやダニの発生を誘発し、アレルギー疾患のリスクを高めてしまう。

 

最近では加湿機能のあるエアコンも登場しているが、空気中の水分を使うため、そもそも乾燥している冬場において十分な加湿効果はあまり期待できない。

 

 

■注目される調湿建材

より効果的に湿度をコントロールする上で注目されているのが、調湿効果のある自然素材や建材だ。
床や壁、天井などの内装の仕上げ材に水分を吸放湿できる材料を使うことで、乾燥を軽減することができる。

 

自然素材では、無垢のフロアや板張りの天井、漆喰や珪藻土などを使えば調湿効果が期待できる。無垢材の場合は、細胞壁の中の繊維に水分子がくっついたり離れたりするため、季節を問わず爽やかな肌触りが維持でき、素足で快適に過ごすことができる。

 

さらに効果が高いのが調湿建材で、性能試験でJIS規格の基準に達した天井材や塗り壁材などを指す。

 

北洲では、調湿建材の基準をクリアした塗り壁や天井を提案している。
比較的面積の大きい壁で調湿することにより、大きな効果が期待できる。

 

■高断熱・調湿建材の活用・加湿の工夫で健康的な冬を

最適な湿度を求めてさまざまな工夫がなされているが、最も効果的なのは住宅の断熱性能を高め、内装の仕上げ材に水分を吸放湿できる調湿建材を使い、加湿を工夫すること。

 

乾燥を軽減することは、健康的に冬を楽しむ第一歩になる。

 

 

結露と湿度の関係を知り、冬の悩みを解消するには

冬になると私たちを悩ませる結露。
換気などの対策が毎年呼びかけられるが、改善は容易ではない。
結露と湿度の関係やメカニズムを知り、根本的な対策を講じることが重要だ。

 

■結露はどうしてできる?

空気中には水蒸気の状態で必ず水分が含まれている。
どのぐらいの量の水蒸気を空気中に含むことができるかは、空気の温度によって変化する。
暖かい空気ほど水蒸気を多く含むことができるが、冷えていくに従って含み得る水蒸気の量は減っていく。

水蒸気が飽和状態になる温度を露点温度と言い、さらに空気の温度が下がり水蒸気が最大量(飽和水蒸気量)を超えると、空気はすべての水分を水蒸気の状態で保持することができなくなり霧や水滴が発生する。

これが結露だ。

 

 

■低断熱・低気密住宅ほど結露に悩まされやすい

家の中の温度差が大きく、窓際や壁際など空気が冷やされた場所がある低断熱・低気密住宅ほど結露が発生しやすい。
暖房によって温められた空気が、窓表面や壁表面で急激に冷やされて結露が生じるためだ。
さらに表面だけでなく、壁の中に侵入する空気も露点温度に達すると結露の原因となる。

■健康リスクを高める要因に

湿度に関連したさまざまな健康への影響を最小限に抑えるため、住まいの湿度の適正範囲は40~60%と言われており、建築物衛生法でも40~70%とされている。

湿度が40%を下回ると乾燥状態となり、インフルエンザなどのウイルス感染リスクが高まるほか、目や肌の乾燥などの問題が生じる。

一方、湿度が上がり過ぎると、カビやダニが発生しやすくなり、アレルギー疾患のリスクが高まる。

※高湿度状態の健康への影響については、「健康的な暮らしをおびやかす“ダンプネス”」(2021年5月28日掲載)も参照。

 

それだけではない。

窓ガラスや窓枠、窓際の床が水滴で濡れ、木のフローリングにカビが生えたり腐ったりするなど、木材や仕上材の汚損や腐朽、断熱材の性能低下により、建物の寿命を縮めることにつながってしまう。

 

■暖房器具によっては結露が発生しやすくなることも

暖房器具を使って室内の温度を高めさえすれば結露を防げるのだろうか。
残念ながら、暖房器具の種類によってはむしろ結露が生じやすくなる。

 

石油ストーブや石油ファンヒーターなど、室内の空気を使って燃焼する暖房器具は水分が発生する。灯油1リットルが燃焼すると、1.1リットルの水分が出るとされている。

エアコンや電気ストーブなど水分が出ない暖房器具でも、家の中に温度差が存在する限り結露の発生をなくすことはできない。

洗濯物の室内干しや調理など、日常生活のさまざまな場面で水蒸気が発生しており、暖房の選択によっては結露の発生を助長してしまうことになる。

 

■こまめな換気や除湿には限界も

結露対策として、こまめな窓の開放や換気扇の活用による換気で、水蒸気を屋外に排出する方法が呼びかけられている。
また、湿気は暖かい場所から寒い場所に移動するため、湿気がたまりやすい水回りや収納の空気を入れ替えたり、除湿機や乾燥剤を活用したりする方法もある。

しかし、これらは手間がかかる割に根本的な対策にはなり得ない。

 

■最も有効な解決策は「温度差をなくすこと」

結露の解決に最も有効な対策は、住宅内の「温度差をなくすこと」。
断熱・気密の性能を高めて、外の寒さの影響を受けにくく、家の中に冷たい場所がないようにすることが重要になる。

断熱性能を高めれば、室温を低く設定しても十分な暖かさを手に入れることができ、結露が発生しにくい上に、乾燥対策の面でも緩和が期待できる。

■注目すべき窓まわりの断熱性能改善

住宅の断熱性能を高める上で、まず着手すべきは熱の出入りが大きい開口部、特に熱を通しやすい窓の改善だ。
窓などの開口部からの熱損失は、冬の暖房時の熱の約6割に及ぶとされる。

内窓の設置やサッシの交換で断熱性能を高めるだけでも、大幅な改善が見込める。

実際、築30年の仙台市のあるマンションでは、リフォームで内窓を設置したことにより、冬には一桁にまで下がっていた窓まわりの表面温度が20℃にまで改善された。

 

■しっかりした対策で健康リスク回避を

断熱性能を高めて温度差のない住宅環境を作り出すことが、私たちを結露の悩みから解放してくれる。
さまざまな健康リスクから身を守るためにも、しっかりとした対策が求められる。

 

 

暑い夏こそ「冬に暖かい家」の本領発揮!

これから暑い夏本番を迎える日本。
昨今は室内での “熱中症リスク” が頻繁に話題にのぼるようになっている。
今月は「冬でも暖かい家」が “夏の猛暑にも強い家” であることについて紹介したい。

 

「断熱」に優れた家は、文字通り「熱」を「断つ」ことができる

高断熱・高気密の住まいは冬には強いが、夏には弱いのではないか?という声はよく聞かれる。
「高断熱・高気密」=「暖かい」というイメージが先行しているため、熱い夏にはそれこそ “熱の逃げ場所もなく家の中に熱がこもってしまう” のを連想するからではないだろうか。
しかし実際は、文字通り「熱」「絶つ」のである。
外気温が寒くても室内への影響がほとんど無いのと同様、外が猛暑でも「その熱を家の中には入れない」のだ。

 

隙間が多く断熱・気密性能の低い家は、涼しいのか?

隙間が多く気密性の低い家は、風が循環し、暑い夏には良さそうに思えなくもない。
が、実際は「外の熱」がそのまま家に入り込むため、外気の影響をもろに受け、熱い室内になってしまう。
一方、断熱・気密性能の高い家は外の暑さの影響を受けにくいので、エアコンなどの冷房効率も高く、光熱費のコスト削減効果も高い。(いわゆる魔法瓶効果
一見涼しそうな “隙間の多い家” では、エアコンをつけてもどんどん冷たい空気が逃げてしまうので、光熱費がかさむ原因にもなるのである。
「高気密・高断熱住宅」が熱い夏にも強いと言われるのはそのような理由からである。

魔法瓶のように外部の温度の影響を受けにくい

 

 

では、高断熱・高気密住宅の場合はなんの対策も要らないのか?

高断熱・高気密住宅であれば冬も夏も無敵なのか?といえば、そうではない。
高断熱・高気密住宅には「室内の熱がこもりやすい」という点があることは否めない。
その特性を理解しつつ“魔法瓶効果”を最大限に活かすには、ちょっとした工夫が必要。

 

◆「遮熱」を併用することでより効果的に!

外の温度が伝わりにくい高断熱・高気密住宅だが、太陽の光が燦々と差し込むと、いくら窓ガラスの性能が上がっているとはいえ、その「日射熱」で室内温度はどうしても上がってしまう。
逆に「日射を入れない」工夫次第で、室内温度の上昇を防ぐことができる。
“日射遮蔽”という言葉が専門的に語られるが、特に効果が高いのは、窓の外で日射をカットする方法である。
「深い庇」をもった建物であれば、それだけでもだいぶ日射熱を防ぐことができるが、「すだれ」や「よしず」、「外付けのブラインド」や「オーニング」など、窓に日射が当たらないようにする方法が効果的だ。
グリーンカーテンなども同様の効果をもたらしてくれる。

   
昔ながらの知恵「よしず」    癒やし効果もプラス「グリーンカーテン」

 

「通風」を意識して生活に取り入れると、より快適に!

「遮熱」の工夫をしても、日射熱をゼロにすることは不可能だし、家の中から発生する熱もある。そのために、“熱を逃がす”ための「通風」も重要。
日中の熱い時間帯に風を入れるのは逆効果なので、外気温がそれほど高くない朝方や夜に、涼しい風を家の中に通してあげて、こもった熱を外に出してあげることで、より快適な室内を保つことができる。


涼しい時間帯に室内の温まった空気を逃がすことも有効

 


北から南へ、下から上へ風のルートを確保することがポイント

 

 

暑い夏にも強い「高断熱・高気密住宅」。
ただしその効果を最大限に活かすためには、特性を理解したちょっとの工夫が必要。

日射熱を入れない「遮熱」と、こもった熱を逃がす「通風」の2つを意識することで、より快適な夏を過ごすことができるだろう。
ぜひ、今日からでも試してみてはいかがだろうか。

暖かい住まいを実現するために Vol.3 ~ 非破壊断熱という選択肢 ~

 

前回の記事では、住まいをゾーンで捉えて断熱施工する「ゾーン断熱」という考え方を紹介した。
今回は、その「ゾーン断熱」施工を行う際にも検討できる「非破壊断熱工事」について触れたい。

 

床、壁、天井を壊さずに断熱性能を付加できる「非破壊断熱工事」

“非破壊断熱”というとイメージがつきにくいかもしれないが、 いわゆる「床や壁、天井を壊さずに施工する」断熱方法のことである。 家全体の間取り変更を含めてリノベーションを行う際は、壁の中に断熱材を充填する「充填断熱」が一般的である。
床や壁を壊すことになるので、その時にしっかりと内側に断熱材を充填するのだ。

 ← 充填断熱施工写真

 

しかし、間取りの変更はしないけれども断熱性能は上げたいという人や、前回の記事で紹介した「ゾーン断熱」を行いたいという人には「非破壊断熱工事」という選択肢もある。

「床下の断熱施工」や「天井裏に断熱材を吹き込むような施工」は、 これまでも比較的容易にできる断熱工事として知られているが、それらも「非破壊断熱」のひとつである。

 

壁の非破壊断熱 <断熱ボード>

前述のとおり、床の断熱については下からの断熱材吹付けや断熱パネルの施工、また天井については天井裏への断熱材ブローイングなどが一般的である。では壁については、どのような手段があるのだろうか?

壁の非破壊断熱工事については、「断熱ボード」を既存の壁の内側に張るという施工方法がある。イメージとしては、外壁の外側に断熱材を張る「外断熱」の逆パターンとも言えようか。 建材メーカー各社も性能向上への探求を進めており、断熱施工の一つの手法として確立されつつある。

          

   ↑ 既存の壁に断熱ボードが貼っている状態      ↑ 断熱ボードの断面               

 

メリットは、工事規模の軽減とそれに伴う施工費の縮小が挙げられるだろう。 なんと言っても既存の壁を壊さずに済むことで、住みながらの工事がよりしやすくなること。 また、解体工事の必要がなく、施工費を抑えることができるという点が大きい。 わかりやすいデメリットとしては、室内空間が狭くなる点か。 既存壁の内側に施工することになるので、断熱ボードの厚み分だけ室内が狭くなる。 ボードの厚みが3.5センチほどなので、その分ずつ壁が内側に入ってくるイメージだ。

部分断熱やゾーン断熱の施工を検討する際には、メリットとデメリットをしっかりと考慮しながら、 この非破壊断熱施工も検討のひとつに入れてみてはいかがだろう。

 

開口部の断熱性能向上も合わせて検討すべき

上記の非破壊断熱工事をする際には、やはりサッシなどの開口部の断熱性能も合わせて高める必要がある。 充填断熱を行う場合でも、非破壊断熱を行う場合でも、室内に極端に断熱性能が低い箇所が生まれることは望ましくない。 逃げられなくなった熱が一気に性能の低い箇所に集まり、壁内結露などの原因にもなり得るからだ。 非破壊断熱工事を行う際には、施工の相性も良い「内窓」の設置も合わせて検討することをオススメする。

  ← 内窓施工イメージ

 

 

比較的気軽に断熱性能を高めることができる「非破壊断熱工事」だが、 室内の断熱性能のバランスを考えずに安易に施工するのは注意が必要だ。 既存の断熱材の性能をしっかりと把握することと、気流止めの確かな設計など、 断熱気密の理論をわきまえた上での施工は絶対条件となる。

前回の記事の続きとなるが、施工範囲の検討と合わせて、 その施工方法についても実績のあるプロに相談しながら計画を進めてみてはいかがだろう。

暖かい住まいを実現するために Vol.2 ~ 家全体を改修しないと意味がない? ~

前回の記事では、なぜ住まいの断熱化が必要なのか?その目的から改めて確認し、「居住性・快適性の向上」「省エネルギー」「表面結露の防止」という3つの目的を共有した。

では、自分たちが今住む家を暖かく改善したいと考えた時、具体的にどのような点から検討を進めていけば良いのだろうか。 

 

大規模リフォームじゃないと意味がない?

 

家中どこにいても均一に暖かい住まいに改善するとしたら、やはり一階から二階までのすべての断熱改修を行う、いわゆる“フルリノベーション”が必要にる。それでも、建て替えよりは費用が抑えられることと、箇所によっては断熱“補強”で十分な結果が見込める部分もあるため、建て替えよりもフルリノベーションを選択するユーザはこれからも増えていくことだろう。

とはいえ、誰もが簡単に検討できるレベルの費用でないことは事実。家全体の改修以外の選択肢はないのだろうか。

 

 

ゾーン断熱という考え方

一般的にリフォーム規模に応じて、「全体改修(フルリノベーション)」、「部分改修」と分類することが多いが、断熱補強の観点においてはその中間である「ゾーン(エリア)改修」という考え方をとることもできる。

改修規模(=費用規模)でいうと、小さい順に、①「部分改修」→②「ゾーン(エリア)改修」→③「全体改修」となる。性能向上のレベルとしては、もちろん逆の順序となる。

①の部分改修とは、「サッシを断熱サッシに交換する」、「サッシに内窓を取り付ける」、「床下部分に断熱を施す」など、短工期で行えるリフォームがそのイメージである。③の全体改修は、骨組みまで解体して全体の断熱・気密をしっかりとやり直すところからリフォームを行うイメージ。

そして、あまり耳慣れないかと思われるのが、②の「ゾーン断熱改修」であろう。前述のとおり、家全体が均一で暖かい室温になるよう改善するためには、大規模なリフォームが必要にはなる。しかし、例えば、「子ども達が巣立った我が家で、2階を使うことはほとんどない」、というような場合、「1階だけで良いから暖かく快適な空間にしたい」というニーズも生まれてくる。そんな時に検討できるのが、「ゾーン断熱」という考え方だ。

ライフスタイルの多様化にも合わせやすい、コスパの良い選択肢といえる。

 

 

ゾーンの捉え方が肝!

しかし、ゾーン改修は良いことばかりではない。プランニングが甘いとリスクが大きくなる考え方でもあるのだ。

  • 「浴室・洗面室」だけをゾーンとして捉えて施工することは良いプランなのか?
  • 「LDK」だけを断熱改修の対象ゾーンにした場合はどうか?
  • 廊下までやろうとなった時に、玄関の寒さはどうする?
  • 吹き抜けがあった時はどのように考える?

このような検討をすること無しに、単純に施工エリアだけを決めることは危険である。

ゾーンで断熱改修をした場合は、基本的にはそれ以外の場所との断熱性能の差が激しくなる。つまりは、改修前よりもゾーン内外のヒートショックリスクを高めることにもなり得るのである。また、非断熱エリアの表面結露の誘発リスクも高まるだろう。

リスクを考慮した上で、ゾーン断熱のメリットを生かしたプランを練ることが重要なポイントだ。

また、換気計画や暖房計画を抜きにしては考えられない。これらをきちんとプランニングすることが、まさにゾーン断熱改修の肝となる。

 

 

身体へ極力負担をかけない暖かな空間を実現するためには、建て替えやフルリノベーションじゃなければ意味がないのでは、と諦める必要は全くない。

今の生活パターンをしっかりと見つめ、ゾーン断熱というアイデアも頭におきながら、実現可能な計画を信頼できるプロと一緒に検討していくことをお勧めしたい。

暖かい住まいを実現するために Vol.1 ~「温度ムラ」が大敵!~

これまで、暖かい住まいがどれだけ住む人の健康に良いかという点を様々な先生方の研究結果を元に紹介してきた。
では、今、寒い家に住んでいる人はどうやって家を暖かくすれば良いのか。


「技術編」としてこれから3回にわたって、具体的な考え方や対策のポイントなどを取り上げる。
今回はまず、暖かな家、その基本的な考え方について改めて紹介したい。



暖房の意味とその効果

まずてっとり早く家を暖かくするために頭に浮かぶことは「暖房」かもしれない。
その「暖房」は本来は部屋全体を暖めることを指し、室温と無関係に人を暖める「採暖」とは区別しなければならない。
部屋全体が暖かくないと、こたつに入っていても背中側が低温にさらされていたり、台所に立ったりトイレに立ったりする度に急激な温度変化のショックにより体はストレスを受けることになる。

温度ムラの無い室内環境がいかに体に優しいかは、これまでの記事でも多く紹介してきたので、ここでは割愛したい。
問題なのは、いくら採暖器具を駆使しても、隙間だらけの家では部屋全体を均質に暖めることは難しく、ムラのある室温環境しか作れないということである。

やはり、住まいの断熱化が重要になってくるのだ。



住まいの断熱化のポイント

断熱の目的は大きく3つに分けられる。
1つ目が「居住性・快適性の向上」、2つ目が「省エネルギー」、3つ目が「表面結露(※)の防止」である。この3つが“断熱の効果”と言い換えることもできるだろう。

そして、断熱施工の難易度に関して言うと、「①表面結露の防止」、「②省エネルギー」、「③居住性・快適性の向上」の順に高くなる。
①から③にいくに従って、断熱材はより厚いものが必要となり、また、しっかりとした施工が求められることになる。

断熱化の目的とすべきは「居住性・快適性の向上」であり、そこに照準を合わせると、「省エネ」だったり「結露防止」などはおまけに付いてくるもの、と言っても良いだろう。


※表面結露/窓ガラスやサッシ、壁などの表面に発生する結露。水蒸気を含んだ暖かい空気が温度の低い建材に触れることでおこる。


高断熱の家と低断熱の家のわかりやすい違いとは

高断熱の家とは、一言で言えばムラのない室温が実現できる家だ。
ムラのない室温は、住む人の「体感温度」に密接に関係している。

下のイラストを見て欲しい。


  

左が低断熱の家。右が高断熱の家である。
同じ「室温20℃」でも、低断熱の家は外部に接する天井や壁、床の表面温度が低く、「体感温度」に大きな違いが生まれるのだ。
結果、低断熱の家では「採暖」以外の「暖」がとれない、ということになるのだ。


暖房機器に大きな予算をつぎ込む前に、まずは家の断熱化について考えてみることをお勧めしたい。
その際ポイントとなるのは、おまけとして付いてくる「省エネ」のためのリフォームではなく、「健康・快適」を実現するための断熱リフォームを検討することではないだろうか。


※参考資料 / 牧子 芳正 『住宅読本』(2005、北洲総合研究所)

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