【住まい手インタビュー】高断熱高気密住宅+全館空調システムで快適な暮らし!

前回の記事では、北洲の住まいの温熱環境調査の結果、高断熱住宅は概ね快適な温熱環境を実現できていること、とりわけ全館空調システムを採用し、冷暖房設備の連続運転を行なった場合にはさらに温度が安定することについて、データをもとに紹介した。

では実際の住まい手の快適性はどうなのか、その評価を施主であるK様に聞いた。

 


※写真はイメージ

 

『基本性能』を重視した家選びと、家族で住みながらつくる『快適性』

― K様邸は延床面積が約54坪、二世帯住宅として建てられたそうですが、家づくりで重視したのはどんなことですか?

K様(ご主人):断熱性・気密性を含めた基本性能と全館空調は絶対条件でした。それと、安全性と耐火性はもとより、メンテナンスのしやすい外装材、この3つです。
それ以外のこと、間取りや仕様なんかは、すべて妻と息子夫婦に任せましたね(笑)。

 

― 1年間、リビング、脱衣室、寝室の3か所で温熱環境測定を行わせていただきましたが、驚くほど温度が安定していました。

K様:基本性能がしっかりしているから、全館空調で家中が均一な温度になるのだと思います。ただ、住みながら工夫した点はいくつかあります。
例えば、我が家の場合、南西に位置する子世帯のリビングダイニングは、デザインの都合で軒の出が無いため、どうしても夏場に西日が入ると、少しだけ温度が上がってしまいます。そこで、リビングの入口側から室内へ、対角線上に扇風機で風を送ってみたところ、対流が起きてリビング全体がとても快適になりました。
このように、家族みんなで少しずつ工夫を重ねて、住みながらさらに快適な家にしていきました。

 

― 住んでからの調整でさらに快適になったのですね!夏は西日対策とのことですが、冬場はいかがですか?

K様:冬場は、天気予報で明朝の気温が低いことが分かると、就寝前に設定温度を少し上げました。そのおかげもあってか、北側の私の寝室に設置した温度計では、データからもわかるとおり21度以上をキープしていて、とても快適でした。
私の場合は、以前の家がとても寒くて、結露もひどかった。とにかく暖かい家は絶対条件でした。全館空調は全部屋を暖めるので、光熱費は少し高くなりますが、妻は風邪をひくぐらいなら光熱費がかかってもいいと言います。私もその意見に賛成で、風邪をひいて寝込むよりも、元気に光熱費分を働いて稼いだほうがいい(笑)。新居に引っ越して5年になりますが、引っ越してから実はまだ一度も風邪をひいていないんです!

 

 

 

熱効率と快適性、コストのバランスに配慮した住まいづくりを

家自体の基本性能がいちばん重要なことは言うまでもない。断熱はあとから容易に追加できないし、長く暮らす場所だからこそ、数十年先まで見据えてつくる必要がある。
そのうえで、家中の温度ムラをなくすためには、冷暖房設備の連続運転が欠かせない。ダイキン工業の調査によると、エアコン稼働の時間帯によっては連続運転のほうが、間欠運転よりも消費電力が少なくて済むというデータもある。
https://www.daikin.co.jp/air/life/issue/mission05/

前回、建築的手法と機械的手法の組み合わせが重要であることを述べたが、K様のお話からわかるように、これらの手法に加えて「住まい方の工夫」が合わさることによって、快適性は向上する。

 

 

熱効率と快適性、ランニングコストのバランスに配慮した家づくりが重要である。決して簡単なことではないが、北洲はそのベストバランスをこれからも追求し、健康的な暮らしのために提案していきたい。

 

【温度の実測データ公開】暖かい住まいの真価とは?

近年、住宅業界では高断熱化が浸透し、次世代省エネ基準をクリアしている新築戸建住宅は全体の53%に及ぶ(国土交通省2015年度調査による)。ただし、次世代省エネ基準の適合については、断熱性を表すUA値や一次エネルギー消費量の基準によって判定されるため、それらはあくまで計算値である。

省エネ住宅の温熱環境の実態はどうなっているのか。果たして本当に快適なのか。住み手の健康維持増進につながっているのか。
住宅メーカーとしてその答えを知るべく、北洲では温熱環境調査を行なっている。

施主の方々の協力のもと、温熱環境測定と健康調査を行なっており、リビング、脱衣室、寝室の3ヶ所に温湿度計を設置いただき、1年分の温湿度データを収集している(※1)。
高断熱高気密住宅であっても、外気温の影響は受ける。また、ライフスタイルや冷暖房機器の使い方によって快適さは変わってくる。住まい手がどのような暮らしをし、温熱環境がどのように変化するのかを測定し、これからの家づくりや住みこなし方の提案に活かしていこうという取組みである。

※1 北洲ハウジングが設計施工した戸建て住宅に住む居住者に行なった健康調査。期間および人数:2019年3月1日~2020年2月29日67名、2020年4月1日~2021年3月31日50名。CASBEE『健康チェックリスト』と生活習慣等に関するアンケートの記入、年間を通して温湿度計の設置などを実施。

 

高断熱住宅は快適温度を維持 ~冷暖房の連続運転でさらに快適に~

結果を見て、ほっと胸をなでおろすことができた。断熱性能が高い当社の住宅は、1年を通して快適な温熱環境を実現できていることが調査から明らかになった。なかでも特筆すべきは、冷暖房設備に全館空調システムを採用した住まいである。

全館空調システムを採用することで、冷暖房設備の連続運転により、一年を通して、家中が快適な温度帯で安定して推移していたのである。

 

K様邸2月(冬期)の温度データ

 

上のグラフは、全館空調システムを採用しているK様邸(宮城県仙台市)の冬期2月の室温測定結果である。住宅性能はHEAT20 G1相当で、国の省エネ基準よりもさらに高い、民間の断熱基準をクリアしている。
仙台の2月は、外気温がマイナス5℃近くまで下がった日があるにもかかわらず、K様邸の室温はリビング・脱衣室、寝室ともに20~25℃の間で推移していた。建物自体の断熱性能はもちろんだが、全館空調システムによる暖房の連続運転が、室温を安定させ快適な環境をつくり出していると考えられる。

 

K様邸8月(夏期)の温度データ

 

夏期8月はどうだろうか。8月は外気温が35℃近くまで上がる日もあったが、K様邸はリビング、脱衣室、寝室いずれも25℃前後をキープしていた。

 

建築的手法と機械的手法の連動で叶えられる「省エネルギーかつ快適」な空間

高断熱住宅は魔法瓶のような構造で、外の熱を内側に伝えづらくするため、少ないエネルギーで室内を快適温度にすることが知られている。だが、建物の性能だけでは、冬の場合、暖房を切ってしまうと室温が下がるのを防ぐことは難しい。K様邸では、全館空調を常時オンにしていることで、とろ火のような状態で暖房の連続運転が行われ、一定温度をキープしていることがわかる。

まずは建物自体(=建築的手法)で快適性をつくることがなによりも重要である。そのうえで、冷暖房設備(=機械的手法)に少しだけ頼り、最適な運転を行なうことで、健康的な暮らしを送ることができる。

 

自宅の快適性を施主であるK様はどのように感じているのか?住み心地はどうなのか?
実際にインタビューした内容を次回の記事では紹介したい。

【北洲オーナーの調査結果】/『CASBEE®健康チェックリスト』調査

住まいの健康性を診断できるツールがあるのをご存知だろうか?

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)のひとつに『健康チェックリスト』がある。北洲では施主の方々の協力のもと、温熱環境測定と同チェックリストをベースにした健康調査(※1)を行なっている。この取組みは、多くの調査データを集め公表していくことで、住まいと健康の関係と、その重要性を広く知ってもらうことが狙いだ。今回の記事では、自宅の健康性をチェックできるツールの紹介と、北洲で行なった調査結果の一部を紹介していきたい。

※1 北洲ハウジングが設計施工した戸建て住宅に住む居住者(67名)に2019年3月1日~2020年2月29日の期間に行なった健康調査。CASBEE『健康チェックリスト』と生活習慣等に関するアンケートの記入、また、1年間の温湿度測定(居間・寝室・脱衣室)と家庭内血圧の測定にご協力いただいた。

 

『CASBEE健康チェックリスト』とは

出典:CASBEEすまいの健康チェックリストについて(パンフレット)
https://www.ibec.or.jp/CASBEE/casbee_health/files/pamphlet.pdf

 

『CASBEE健康チェックリスト』は、住まいの健康性を評価するソフトである。
50項目の質問に答えることで、自身の住まいが健康にどのような影響を与えているのか、その要素をみつけることができる。

出典:CASBEEすまいの健康チェックリストについて(パンフレット)
https://www.ibec.or.jp/CASBEE/casbee_health/files/pamphlet.pdf

 

実際に暮らしていると、住まいに対して「暑い・寒い」や「窓が結露してカビが生える」「日当たりが悪い」「外の騒音が聞こえる」「家の中に段差が多い」など様々な気づきがあるものだが、そのまま見過ごしてしまうケースも多いのではないだろうか。この健康チェックリストでは、そのような居住環境の異常性の有無に気づき、改善のきっかけを得ることができるため、住まいを改善したい、より良くしたいという方にはぜひ実施してもらいたい。

出典:CASBEEすまいの健康チェックリストについて(パンフレット)
https://www.ibec.or.jp/CASBEE/casbee_health/files/pamphlet.pdf

 

また、スコア化と同時に、全国6000軒の戸建住宅と比較した健康ランキングを知ることができる。あなたの総合スコアが全国平均と比較して高いのか低いのか、また項目や居室ごとにはどうか等を比較することができる。


出典:CASBEEすまいの健康チェックリストについて(パンフレット)
https://www.ibec.or.jp/CASBEE/casbee_health/files/pamphlet.pdf

 

『CASBEE健康チェックリスト』でなぜ健康性が分かるのか

『CASBEE健康チェックリスト』では、これまで全国5,000軒以上の居住者の回答を得るとともに、回答者自身および家族の健康状態についても尋ねている。その結果、総合スコアが高い住宅に住む人ほど主観的健康感が統計的に有意に高いことがわかった。また、病気の有無について尋ねたところ、総合スコアが高い住宅に住む人ほど慢性疾患にかかる人の割合(有病率)が少なくなることがわかったという。

そのため、健康チェックリストの総合スコアを高めることが、居住者の健康改善につながる可能性があると考えられている。

 

北洲オーナーの調査結果は?  ~総合スコアは105点に~

次に、北洲ハウジング居住者の調査結果を紹介しよう。
今回の調査では、北洲ハウジングが設計施工した戸建住宅の居住者67名を対象に、『CASBEE健康チェックリスト』を実施した。

その結果、北洲の居住者の総合スコアの平均は105点となった。

ちなみに全国平均は91点。
調査に協力頂いた法政大学 川久保 俊教授は次のように語る。

「これは全国平均と比較して14点の差です。この差は非常に大きいです。住めば都というように、どんなに性能の悪い家でもある程度人は満足してしまいますし、逆に理想が高くてどんなに性能の良い家でも満足しない人もいます。過去に全国でこの調査を実施してきましたが、どこでもおおよそ80~100点に収まります。この平均点が100点を超える場合は良質な住宅を市場へ供給できていると考えていただいて問題ないと思います。」

 
チェックリストの質問項目には、「暖かさ・涼しさ」や「静かさ」に関する要素があり、これは高断熱・高気密住宅の特性である快適な温度や温度差のない空間、遮音性などが影響すると考えられる。また、「明るさ」「安心」「安全」といった要素は、照明・カーテン計画や間取り上の配慮、段差の解消や手すりの設置などのバリアフリー設計などが影響すると考えられる。

住宅のつくり手としては、建物自体の基本性能を高めることが住まい手の健康な暮らしにつながること、また設計段階におけるきめ細やかな提案が大事であるということをあらためて感じさせられる質問構成になっている。

それらに関して、北洲では健康で快適に暮らすための8つの性能を掲げて、建築士が一邸一邸丁寧に実践してきたため、今回の調査結果につながったとも考えられる。

また、下図の健康チェックリストの総合スコアと主観的健康感の関係をみてもわかるように、北洲の住まいの居住者は主観的健康感が高いということが言えるのではないだろうか。

 

出典:CASBEEすまいの健康チェックリストについて(パンフレット)
https://www.ibec.or.jp/CASBEE/casbee_health/files/pamphlet.pdf

 

『すまいの健康チェックリスト』でぜひ住まいの健康性チェックを!

CASBEE『すまいの健康チェックリスト』は、ホームページ上で50項目の質問に答えるだけの簡単な調査だ。ぜひあなたの住まいもチェックしてみてはいかがだろうか。

 

▼CASBEE『すまいの健康チェックリスト』
https://www.jsbc.or.jp/CASBEE/health_check/index.html

 

健康的な室内環境に欠かせない「換気」の基本とは?

日本各地で梅雨が明け、本格的な夏がやってきた。
熱中症対策として「快適な室温を保つ」重要性については前回記したが、快適な室内環境を作るという点においては、「換気」というキーワードも忘れてはいけない。

 

今だからこそ! 換気の重要性を再確認!

なぜ換気は必要なのか。初歩的なところから確認しておきたい。

換気とは、部屋の空気と外の空気を入れ換えることによって、室内の汚れた空気を外へ出したり、薄めたりすること。
汚れた空気とは、二酸化炭素や一酸化炭素、ハウスダストや花粉、細菌、ウィルスなど、人間の身体に害を及ぼす可能性のあるものを指す。

換気をしないまま長い時間が経過すると、そのような汚染物質が室内に留まり続け、住む人の健康にも大きな影響を与えることになる。
化学物質やカビ・ダニなどに起因する「シックハウス症候群」などがよく知られているが、二酸化炭素濃度の上昇によっておこる「頭痛」「めまい」といった身近な症状もその一つだ。

暑い夏を乗り切るためにエアコンをフル稼働する日々が続くが、「換気」ということが忘れられてしまっては、いくら過ごしやすい室温に保ったところで健康的な室内環境とは言えない。

 

具体的な換気の方法は?

まず「24時間換気システム」がついている家に関しては、それを “正しく” 使うことが重要だ。

外の空気が入ってきて暑い(または寒い)というような理由で排気口を閉じてしまったり、システムのスイッチをオフにしてしまっている人も少なくないようだが、1時間で家全体の空気を半分以上入れ換えることができるシステムであり、この性能をまずはフルで発揮させることが大切だ。*

*台風など強い風雨が予測されている時には、状況に応じて給気口を閉めてシステムを停止するのが良い場合もあり。

この機会に、メンテナンスの実施状況を含め、改めて自宅の換気システムのことに思いを巡らせてみてはいかがだろうか。

 
一方、築年数が古く、24時間換気システムがついていない家に関してはどうだろう。

そうした家の場合は窓を開けて空気の入れ換えをすることになるが、効果的な空気の入れ換えには少しのコツがある。
以下、“基本のキ” とも言える内容ではあるが、改めて確認しておこう。

 
空気の通り道を作る

1箇所の窓を開けるのではなく、可能ならば2箇所の窓を開けて“空気の通り道”を作ってやることで効率的な換気が図れる。
その際、その2つの窓は対角線上にあることがさらに望ましい。

例えば、すぐ近くの2箇所の窓を開けた場合、部屋全体の空気の流れが作れず、換気の効率は悪くなる。

また、仮に一つの窓しか無い部屋の場合は、扇風機やサーキュレーターを窓の外に向けて空気の流れを作り、室内の空気を外に出してあげることで換気を効果的に促すことができる。

 
台所の換気扇も活用する。

台所の換気扇は排気量が大きいので、うまく活用することで効果的な換気につながる。
1箇所の窓しか開けられない場合はもちろん、2箇所の窓を開ける場合でも換気を効果的にアシストしてくれるというから、上手に活用していきたい。

 
1時間に5~10分程度の換気を。

窓を開けて換気をする場合は、1時間に5~10分程度の時間行うのが望ましい。

夏の暑い日中に、それほど頻繁に窓を開けられるかどうかという問題もあるが、裏を返せば、
そのくらいの頻度で換気をしなければ汚れた空気を入れ換えられないということだろう。
その感覚はぜひ覚えておきたい。

 
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今や、古い家でも “性能向上リノベーション” を機に24時間換気システムを導入する事例は多い。
繰り返しになるが、24時間換気システムが設置された家に関しては、その機能を正しく使用することが何よりも大切だ。
必要なメンテナンスを継続することで室内環境をキレイに保ち、健康的な暮らしの基盤としての「住まい」を実現して欲しい。
 
また、24時間換気システムが設置されていない家については、上記のヒントを元に、室内の空気を効果的に入れ換えて、汚れた空気が留まることの無いように気をつけていきたい。

健康的な身体は健康的な室内環境から。

「換気」への意識を高め、できることから実践していこう。

思い込みが危険を招く! ~室内における熱中症リスクとは~

もうすぐ本格的な夏がやってくる。
気温が高いだけではなく湿度も高いこの時期は、熱中症への注意が特に必要だ。
そのリスクを正しく知り、今のうちから対策意識を高めておきたい。

 

熱中症の多くは「室内」で起きている

ここ数年、熱中症に関するニュースを頻繁に目にすることがある。
例年、熱中症は梅雨明けの時期に救急搬送のピークを迎え、死亡者数も増えやすいという。
梅雨明け後は急激に気温が上昇し、体が適応しにくい状態になることがその要因と言われている。

注目したいのは、熱中症は意外なことに炎天下の屋外ではなく、「住居など室内で起きる場合が大半を占めている」という点である。
そして、年齢層別に見ると半数近くが「高齢者」なのである。

 


※以前の記事から再掲

 

このように、『高温多湿の室内が、特に高齢者にとっては大きなリスクを伴う環境である』ということをまずは知ることが大切だ。
決して、“ 日射を直接浴びる” 外での活動だけにリスクがあるわけではない。
基本的なことだが、まずはこうした事実をしっかりと認識することが重要だ。
 
※災害レベルとも言われる熱中症リスクに関しては以前の記事で詳しく取り上げている
「夏の室内。その暑さはもはや災害レベル!?」(2019.07.30)

 

就寝中の室内環境にも十分に注意を!!

熱中症のリスクを軽減するためには、まず第一に、室内温度を28℃未満におさえ、湿度も50%前後になるように配慮することが重要。
そのためには「エアコン」を賢く使うことが一番の近道だろう。
高齢者の中には「エアコンが苦手」という人も実際に多いようで、そうした人が断熱性能の低い家に長時間在宅していることで、さらに熱中症のリスクが高まるとも言われている。

また、マンションに住む高齢者の場合は特に、「夜間熱中症」に対する注意が必要だ。
木造住宅と異なり、鉄筋コンクリートマンションの場合は昼間に屋根や外壁が熱を溜め込み、その熱が夜間にゆっくりと室内に伝わってくるため、朝まで室温が下がりにくい。
場合によっては、夜が更けてもどんどんと室温が上がり続けることもあるのだ。

このような事実はなかなか多くの人には知られていないのではないだろうか?

 


※以前の記事から再掲

 
就寝前にエアコンをオフにするとか、寝入りまでの1~2時間だけタイマーをセットするというような、なんとなくの習慣を持っている人は注意が必要だ。

「夜は涼しくなってくるから大丈夫」という誰もが陥りそうな思い込みが、高齢者の熱中症リスクを高めているという事実を知っておきたい。
 
※こちらも以前の記事で詳しく取り上げている
「共同住宅・集合住宅で高まる暑熱災害のリスク」(2019.08.30)

 
暑い夏には、就寝時も28℃の温度設定でエアコンを連続運転させておくことが推奨されている。
研究結果に裏打ちされたこのような知見は、積極的に普段の生活に取り入れていきたい。

 
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換気も熱中症対策には効果的だ。
室内に風を通してやることで、床・壁・天井の表面温度を効果的に下げられるだけでなく、暑さとともに高くなりがちな湿度を逃してあげることもできる。

熱中症のリスクを正しく認識するとともに、できる対策を無理なく行うことで、健康的に暑い夏を乗り切っていきたいものだ。

 
※参考データ出典 / 週刊文春ムック『温かい家は寿命を延ばす』(株式会社文芸春秋 令和元年10月17日発行)

健康的な暮らしをおびやかす “ダンプネス”

今年は平年と比べて記録的に梅雨入りが早いと言われている。
ジメジメした季節は気持ちも滅入りがちだが、そうした「心」の問題だけではなく、過度な湿度が直接「身体」に与える悪影響についても知っておきたい。

 

欧米では早くから問題視されていた“ダンプネス”

「ダンプネス」というワードはそれほど耳馴染みのある言葉ではないかもしれない。
『damp=湿気のある(湿気を帯びた)』から来ているDampness(湿気)だが、こと建物に関して使われる場合、過度な湿気が及ぼす影響のことを指す場合が多い。

2009年にWHO(世界保健機関)はダンプネスとカビに関する室内環境ガイドラインを策定し、ダンプネス対策を提示している。
そのガイドラインによると、「カビや水漏れ、カビ臭さ、建物の劣化、微生物汚染など、測定または目視できる過度の湿気を原因とする問題が確認できるような状態」と、ダンプネスが定義されている。*


(WHO guidelines for indoor air quality : dampness and mould)

 

どのようにダンプネスが健康に影響を及ぼすのか

過度な湿気が身体にどのように影響を及ぼすのか?
そこには湿気自体の直接的な影響ではなく、「室内環境の汚染」を介した影響が大きいことが知られている。
下記図表を引用する。


*『健康に暮らすための住まいと住まい方エビデンス集』より

 
「水分の発生源」から「ダンプネス」そして「室内環境の汚染」を介して「健康影響」へ繋がっている、という流れが明快に表されている。

欧米諸国では早くからダンプネスが及ぼす健康への影響についての問題意識は高く、特に喘息や上部軌道疾患との因果関係を調べる研究が進んでいた。
アメリカでは、「喘息を患っている人の約20%は住宅のダンプネスが原因である」というデータを導いたり、またカナダでは、「ダンプネスが子どもの喘息発症を50%高めたり、上部気道疾患を60%高める」というようなデータも示されていた。*

 

日本における研究成果

日本でも、既に10年以上前、2007年~2010年に東北大学の吉野博名誉教授らが実施した疫学的調査の結果が公表されている。
中でもケース・コントロール研究手法に基づく全国規模の実測調査の結果を紹介したい。

 


*『健康に暮らすための住まいと住まい方エビデンス集』より

 

アレルギー性疾患を有する家族がいる群(ケース群)では、冬期や梅雨の時期に相対湿度が70%を超す割合が高くなっていることが示されている。
高湿度状態の環境と疾患との相関関係を客観的に捉えた貴重なデータだ。

 

ダンプネスによる健康影響を受けないための「住まい」と「住まい方」

これまでの研究成果から、ダンプネスによる健康影響を受けないためには高湿度な状態を継続させないことが何よりも求められる、ということがわかっている。
特に呼吸器疾患の発症を促すカビやダニなどの微生物の繁殖を助長させないことが重要だ。

具体的な対策としては、
換気を十分に行うこと、洗濯物を干すなどの“室内で湿度を発生するような住まい方”を極力避ける、室内の湿度が高い場合には除湿機を運転する、などが提言されている。*

市販の温湿度計などを活用し、40%~60%といわれる適正湿度に室内を保つことがポイントになる。
(参照:前回の記事『子どもの疾病に住まい環境が影響を!?』

また、新築を検討したり既存住宅のリノベーションを計画する際などには、家全体の換気計画についてもしっかりと検討することが大切だ。間取りやデザインだけにとらわれず、健康的な室内空間を実現できるかという点にも目を向けていきたい。

 
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明瞭な四季の移ろいを愉しむことができる日本。
梅雨は梅雨で趣のある季節ではあるが、ジメジメした時期を迎えるにあたって、高湿度な室内環境をそのままにしておくことのリスクについては、改めて意識を向ける必要がありそうだ。

カビやダニを発生させないように湿度制御を上手に行いながら、健康的な室内環境のもとで梅雨の時期を乗り越えたいところだ。

 

*資料・データ出典 / 『健康に暮らすための住まいと住まい方エビデンス集』
(健康維持増進住宅研究委員会/健康維持増進住宅研究コンソーシアム 編著)

子どもの疾病に住まい環境が影響を!?

「住まいと健康」に関する研究が、さらなる飛躍を遂げようとしている。
これまで行われてきたいくつかの研究を“統合”して分析することで、より有意義な結果を得ようとする試みが進んでいる。
今回はその中でも、子どもの疾病と住まい環境に関する研究成果を紹介したい。

住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 ~第5回報告会~(日本サステナブル建築協会)で報告された『他調査との統合分析の施行』における「子どもの疾病・諸症状」。
慶應義塾大学の伊香賀研究室が中心となって分析したものだ。

 

子どもの疾病に室内環境が影響を及ぼす可能性

分析対象として「2014~2018年度の国土交通省スマートウェルネス住宅等推進調査事業」の調査における子どものデータと、「2015年、2017年、2018年における平成11年基準適合住宅調査等」における子どものデータを使用し、いずれも12歳未満のデータに絞って分析をした結果が報告されている。※有効サンプル686名(405世帯)。

「喘息」・「中耳炎」・「アレルギー性鼻炎」・「アトピー性皮膚炎」
この4つの疾病について、室内環境の違いによってどのような差が生まれるのかを調べている。
まずは686名について、その症状の有無を明らかにするところから。

 

 

例えば、アレルギー性鼻炎や中耳炎という診断を受けた子どもは、4人に1人の割合でいることがわかる。

 

ここからが本題である。

これらの疾病について「診断を受けたことがない」子どもたちを[0]群、それ以外の「診断を受けたことがあるが特に治療していない」「症状が悪い時のみ受診・治療している」「定期的に受診・治療している」子ども達を[1]群とし、それぞれの疾病ごとに室内環境による影響を分析している。

※分析に使用されている指標(イメージ)

 

 

◆居間の床近傍室温の「喘息」症状との関わり

最初に、「喘息」についての分析結果を見ていこう。

居間床近傍室温が中央値(ここでは16.1℃ )以上の子どもは、中央値未満の子どもと比べて、喘息である可能性が0.5倍となっている。つまり半分という結果だ。
足元が暖かい住まいでは、喘息症状が発生するリスクを低減できる可能性が示された。

 

◆適正湿度の「中耳炎」症状との関わり

次に、比較的大人よりもかかりやすいといわれる「中耳炎」についての分析結果を。

居間湿度が40%未満の子どもは、40%以上60%未満の子どもと比べて中耳炎である可能性が1.5倍高いことがわかった。
室内を乾燥させずに適正湿度を保つことで、「中耳炎」のリスクを低減できる可能性が示されている。

 

◆適正湿度の「アレルギー性鼻炎」症状との関わり

花粉やハウスダストなど様々な要因で症状が現れる「アレルギー性鼻炎」と室内環境との関連性はどのようになっているだろう。

 

居間床上1m室温が18℃未満の群について、湿度と症状の有無を分析したところ、居間湿度が40%未満の子どもは40%以上60%未満の子どもと比べて、アレルギー性鼻炎である可能性が2.5倍高い傾向がある。
これもかなりインパクトのある数値ではないだろうか。

 

◆適正湿度の「アトピー性皮膚炎」症状との関わり

最後に、アトピー性皮膚炎に関する分析結果が下記のとおり。

居間床上1m室温が18℃未満の群について、湿度と症状の有無を分析したところ、居間湿度が60%以上の子どもは、40%以上60%未満の子どもと比べて、アトピー性皮膚炎である可能性が1.9倍の傾向。
この結果を見ても、低すぎず高すぎない「適正な湿度環境」が重要であることがわかる。

 

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詳細な数値データはここでは紹介せず、大きな結論だけを紹介した格好になったが、
いずれも室内環境が子どもの疾病に少なからぬ影響があることを示す結果になっている。

「18℃ 以上の暖かさ」「40~60%と言われる適正湿度」を保てる室内環境をこれまで以上に重視し、住む人自身も学びながら住まいづくりを行っていくことが大切なのではないだろうか。
特に今回発表された研究成果から、室温ほど明確に体感しにくい “湿度” への意識を高めていく必要性が感じられた。

今後の更なる“統合分析”の可能性に期待したい。

 

※資料出典/住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 ~第5回報告会~(日本サステナブル建築協会)より

「2050年カーボンニュートラル」達成のカギは “暖かな住まい”!

カーボンニュートラルに向けた動きが加速しつつある。
先月2月24日に行われた『第5回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース』の様子がYouTubeでもLIVE配信され、大きな関心を呼んでいる。

 

菅総理大臣が「2050年のカーボンニュートラル実現」を宣言したのが、2020年10月26日。
地球温暖化対策で世界に遅れを取っている日本だが、この菅総理の宣言は「いよいよ待ったなし」という機運の高まりをもたらした。
しかし、機運の高まりだけでは事は進まない。スピーディで具体的な取組みを実行できなければ、「2050年カーボンニュートラル」は絵に書いた餅に終わってしまうだろう。

 

“省エネと健康快適はセット”という力強いメッセージ

そうした危機感を持ったメンバーが構成員に名を連ねる『第5回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース』でも、具体的な実行計画と強力なリーダーシップを求める声が多くあがった。
非常に興味深い議論であり、また「従来型の政策では到底実現には至らないのではないか」という危惧も同時に抱くことになった。

この第5回のタスクフォースに参加していた東京大学大学院「前 真之」准教授の提言が秀逸だった。限られた短い時間の中で、問題提起と具体的な提言がなされている。

中でも、
「健康・快適は日本の全ての家で必ず実現すべき基本性能であり、オマケでも贅沢でもない!」
「健康・快適な暮らしを少ない電気代で実現するのが真の省エネ!」
「省エネは国民の命と人生にかかわる大問題!」
「今こそ住宅への集中投資で健康・快適な暮らしと脱炭素の一石二鳥を目指すべき!」
という明快な言葉は、非常に強いメッセージとしてこの議論の中核を成していた。

 

今動かなければいけないワケ

カーボンニュートラルの実現のためには「自然エネルギーの最大活用」と「省エネルギー」という両輪が大きなテーマとなるが、この会議では「省エネルギー」が担うポテンシャルの高さについて言及されていた。
言い換えれば、「省エネルギー」への取組み次第で日本におけるカーボンニュートラルの命運が決まる、ということだろう。

内閣府の特命担当大臣を務める河野太郎氏も「再生エネルギーをいくら頑張っても、省エネが疎かだったらカーボンニュートラルは達成できない!」「再エネを増やすとともに、省エネを徹底的にやっていかないと!」という考えを明言していた。

そして、その「省エネ」による効果が大きく見込める分野が“住宅”なのである。

⇒日本の住宅の約9割は無断熱を含む低断熱住宅。暖房等で多くのエネルギーを消費している。

 

2020年から施行されるはずだった「省エネ基準の適合義務化」が直前になって見送られ、「説明義務化」に留まってしまったりと、日本全体の住宅性能向上に向けた動きはとてつもなく鈍い。
2050年と言えば、あと30年。
住宅の寿命を考えると、今、性能の低い住宅がどんどん建っていってしまっては、2050年までの脱炭素化など夢のまた夢。
会議に参加していた有識者たちが声高に「今すぐにアクションを起こすべき」と叫んでいる理由はここにある。

 

地球環境のために。住む人の健康・快適のために。

暖かい住まいと健康との関連についてこれまでも多くの研究者の研究成果を紹介してきたが、2050年カーボンニュートラル宣言を契機に、省エネの面からも日本の住宅性能向上への期待が高まることは確実だ。
前先生の言う「省エネに熱心な “ピンの作り手” 」は日本各地にたくさんいる。
「新しい家づくりを全く勉強しない“キリの作り手” 」を守ろうとしているのではないかと揶揄された国交省をはじめ、各省庁には連携して最大限の省エネを実現するための環境を早急に整えてもらいたい。

 

脱炭素と健康快適な暮らしの実現のために、この会議においても重要なキーワードとして飛び交った “バックキャスティング”という考え方で、大きく舵を切るべき時が来たと言えるだろう。

今後の動向もしっかりと見届けていきたい。

 

※バックキャスティング・・・今できることを積み上げて目標に近づけていくフォワードキャスティングの対義語で、目標までのプロセスを明確にしてから今やるべきことを考えること。

断熱改修の規模による効果の差って!?

断熱改修工事というのは、「広範囲にやればやるほど」「お金をかければかけるほど」その効果は高くなるのだろうか?
断熱改修の規模によって、その効果にはどのくらいの違いが出るの?
そんな素朴な疑問に答えてくれる一つの研究成果を紹介する。

 

改修範囲が広いほど室内は暖かくなる?

基本的には答えは “Yes” だ。
では、手をかける範囲によって室温の変化にどれだけの差が出るのか?
そんな興味深い研究の成果が発表されている。

以下、日本サステナブル建築協会『住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査
第5回報告会』で発表された研究成果を紹介したい。

 

まずは断熱改修を行った範囲に基づき、2つのグループに分ける。

1つ目は、「開口部のみ」を断熱改修したグループ。
(いわゆる窓や玄関等の開口部だけを断熱化したもの)
2つ目は、「開口部」+「α」 で、
開口部の他、天井や壁、床などの外皮を一箇所以上断熱改修したグループだ。

 

 

この2つのグループ別に断熱改修前後の室内温度を比較した結果が以下のとおり。
※断熱改修前後で外気温が異なるため、外気温5℃の場合の最低室温を算出して分析に使用。

 

【戸建住宅の場合】

 

【共同住宅の場合】

 

共同住宅の方がその違いが明確に出ているが、
より広範囲の断熱改修を行うほど室温の上昇量が大きい、という可能性が高いことがわかる

※寝室と脱衣所でも同様に調査した結果、同じ傾向を示している。

 

改修費用によって室内温度の上昇量に違いは出るのか?

では、改修費用によって断熱効果に何らかの違いが生まれるのだろうか?
施工範囲(規模)によってかかる費用はもちろん変わるので、
ここでは1㎡あたりの改修費用によって2つのグループに分けて比較している。

いわば “改修の質” による比較と捉えられるかもしれない。
「㎡あたり10,000円未満のグループ」と、もう1つが「㎡あたり10,000円以上のグループ」だ。

 

【戸建住宅の場合】

 

【共同住宅の場合】

 

断熱改修面積に対してより多くの費用を投じるほどに室温上昇量が大きくなる、という可能性が
示された。ここでも特に共同住宅での効果の差が大きい

※寝室と脱衣所でも同様に調査した結果、同じ傾向を示している。

 

広範囲の断熱改修を行い、また、多くの予算を投じることで室温の暖かさはより叶えられる。
当たり前だと怒られるかもしれない。
しかし、この「当たり前」のように思われることが “実証” された意義は大きい

とはいえ、たくさん壊して多くの部位に手をかけ、たくさんのお金を闇雲にかけるのが良いかという単純な問題ではない。ここが非常に重要だ。
ここを履き違えると、無駄に費用を投じ、その割に大した効果が得られなかったなどという結果につながってしまう。
しっかりとした住宅検診のうえで、弱い部分を効率的に補強して家全体の性能向上を目指すという姿が、費用対効果の点においても、求められる本筋なのだろう。

 
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詳細な住宅属性別の分析や、住む人の生活習慣を考慮した解析など、さらなる研究の展望が広がっているという。
断熱改修工事の効果、特にその質の重要性に一層光が当てられることになるのではないだろうか。
今後のさらなる研究成果に期待したい。

 

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