「寒い冬でも健康・快適に過ごせるようにしたい」
そうは思っても、いざリフォームを考えようとすると、どこから改修したらいいのか、どんなことに気を付ければいいか迷ってしまう人は少なくないのではないか。
そこで、断熱改修の現場を知り抜いた北洲リフォームの遠藤光栄・一級建築士に、断熱改修のコツを聞いた。

 

■最も熱が逃げる「窓」から断熱改修を

 

―住宅のどの部分から断熱改修を考えたらいいのでしょうか。

 

遠藤:まずは熱損失が最も大きい「窓」から改修を考えると良いでしょう。
窓は住宅の熱の出入りが最も大きく、冬場では室内の熱の58%が外に逃げてしまいます。
逆に夏場は外の熱が窓を通して入り、室内の熱の73%に達します。
窓の断熱性能を高めることは、室内環境を向上させるのにとても重要です。

■安易な「窓だけ」改修は「身代わり結露」の原因に

―窓を改修すればひと安心ですか。

遠藤:残念ながら、「窓だけ」の安易な改修は、もともとの躯体の断熱性能によっては「身代わり結露」という新たな問題のリスク要因になります。
窓の断熱性能が、壁や床・天井の断熱性能を上回ってしまうと、そちらのほうが表面結露を起こしやすくなってしまいます。
部分的にでも断熱性能が上がれば、暖房効果も高まり室温が上がりますが、その反面、建物全体の断熱・気密が徹底されていない建物では、壁内への室内空気の移動により壁内結露の可能性も高くなってしまいます。

 

―壁や床に断熱材を入れていても防げないのですか。

遠藤:在来工法(木造軸組構法)の問題点ですが、築30年以上の建物や根太工法の場合は、壁と床や天井との取合い(接合部分)に隙間があるため壁内気流が発生します。
断熱材を入れても、繊維系断熱材であれば内部を気流が通過してしまうため、所定の断熱性能を発揮することができません。
間仕切り壁においても、上下に隙間があれば床下から小屋裏まで煙突状態となり、無断熱壁と同じ状況になってしまいます。

 

■「気流止め改修」で冷気をシャットアウト

―どうしたら問題を解消できますか。

遠藤:壁と床や天井との取合いに隙間ができないように、「気流止め改修」を施して冷気の流入を防ぎます。
気流止めには、乾燥木材や気密シート、圧縮グラスウールの気流止め製品を使うなど、いくつかの方法があります。床下から発砲ウレタン吹付断熱を全面施工することでも一定の効果が期待できます。こちらについても、安易な改修は要注意。
まずは、雨漏れや壁内結露による腐朽・蟻害などの劣化がないかどうか、現在の状態を確認することがとても大切です。

 

―建物の現状確認から始めればいいのですね。

遠藤:建物の構造、断熱や劣化の状況によって改修計画が異なってきます。
既存の建物の状態をしっかり調査した上で、必要な改修を考えることが大事です。

まずは既存の建物の状態をきちんと調査するところから

 

■断熱設計の3つの基本性能を確保する

―断熱改修のポイントは何でしょう。

遠藤:断熱設計の3つの基本性能「断熱性能」「防露性能」「気密性能」を確保することです。
さまざまな材料から作られている壁や床が、適切な断面構成になっているかが断熱性能の鍵になります。

 

3つの基本性能に関わる断面構成の層として、「断熱層」「防湿層」「気密層」「防風層」「通気層」の5つがあります。
この5つに加えて、断熱層内の気流や湿気の侵入を防ぎ、室内と室外の隙間をなくすために気流止めを設けることで、住宅全体を覆うように断熱層・防湿層・気密層を連続させ、断熱性能を向上させることができます。

 

■断熱改修の範囲はどこまで?

―住宅全体の断熱改修が理想的ですがハードルが高いですよね。

遠藤:費用や工期などが心配になりますし、ご家庭の状況によって断熱改修が必要な場所も異なると思います。
実際、子どもが巣立ち、夫婦2人のセカンドライフを考えてリフォームする方が多いです。

前真之・東京大学大学院准教授監修の「健康で快適な暮らしのためのリフォーム読本」(暮らし創造研究会発行)は、費用や工期などの不安を解消しつつ実情に応じた断熱改修の4つのプランを提示しています。

では、実際に住宅のどの部分の改修を考えればいいのか。
必須なのは生活ゾーン(LDK+浴室や洗面などの水回り)。
これに寝室も加えればベストでしょう。

生活ゾーンは断熱改修で温度差をなくし、ヒートショック防止へ

 

■適切な暖房と計画換気を

―改修後に注意すべきことは何ですか。

遠藤:室内の空気を燃焼に使い、その空気を室内に放出する開放型の暖房器具(石油ストーブや石油ファンヒーターなど)は、酸欠や一酸化炭素(CO)中毒の危険性がありますし、水蒸気が発生するため結露の原因になってしまいます。

また、計画換気システムは止めずに24時間連続運転してください。
これを止めてしまうと、室内の空気の汚れや結露の発生につながってしまいます。

 

■健康・快適な室内環境のカギは作用温度

―最後に、健康・快適な室内環境のために知っておくべきことは。

遠藤:健康で快適な室内環境には、作用温度(体感温度)を整えることが肝心です。
作用温度は「(表面温度+室内温度)÷2」で求められます。
※厳密には壁・床・天井などの表面温度(放射温度)の平均値

表面温度を高く保たなければ、どんなに部屋を暖めても作用温度は上がらず、暖かさを感じられません。

快適性に関する国際基準(ISO7730)では、頭から足もとまでの上下温度差が2℃以内であれば快適、4℃以内が許容限界とされています。

つまり、健康を保ち快適な住宅の実現には、断熱性能の向上が重要になります。
住宅の状況にふさわしい断熱改修によって、どんなに外が寒くても快適な我が家でのびのびと楽しい時間を過ごしていただきたいと思います。