今年は平年と比べて記録的に梅雨入りが早いと言われている。
ジメジメした季節は気持ちも滅入りがちだが、そうした「心」の問題だけではなく、過度な湿度が直接「身体」に与える悪影響についても知っておきたい。

 

欧米では早くから問題視されていた“ダンプネス”

「ダンプネス」というワードはそれほど耳馴染みのある言葉ではないかもしれない。
『damp=湿気のある(湿気を帯びた)』から来ているDampness(湿気)だが、こと建物に関して使われる場合、過度な湿気が及ぼす影響のことを指す場合が多い。

2009年にWHO(世界保健機関)はダンプネスとカビに関する室内環境ガイドラインを策定し、ダンプネス対策を提示している。
そのガイドラインによると、「カビや水漏れ、カビ臭さ、建物の劣化、微生物汚染など、測定または目視できる過度の湿気を原因とする問題が確認できるような状態」と、ダンプネスが定義されている。*


(WHO guidelines for indoor air quality : dampness and mould)

 

どのようにダンプネスが健康に影響を及ぼすのか

過度な湿気が身体にどのように影響を及ぼすのか?
そこには湿気自体の直接的な影響ではなく、「室内環境の汚染」を介した影響が大きいことが知られている。
下記図表を引用する。


*『健康に暮らすための住まいと住まい方エビデンス集』より

 
「水分の発生源」から「ダンプネス」そして「室内環境の汚染」を介して「健康影響」へ繋がっている、という流れが明快に表されている。

欧米諸国では早くからダンプネスが及ぼす健康への影響についての問題意識は高く、特に喘息や上部軌道疾患との因果関係を調べる研究が進んでいた。
アメリカでは、「喘息を患っている人の約20%は住宅のダンプネスが原因である」というデータを導いたり、またカナダでは、「ダンプネスが子どもの喘息発症を50%高めたり、上部気道疾患を60%高める」というようなデータも示されていた。*

 

日本における研究成果

日本でも、既に10年以上前、2007年~2010年に東北大学の吉野博名誉教授らが実施した疫学的調査の結果が公表されている。
中でもケース・コントロール研究手法に基づく全国規模の実測調査の結果を紹介したい。

 


*『健康に暮らすための住まいと住まい方エビデンス集』より

 

アレルギー性疾患を有する家族がいる群(ケース群)では、冬期や梅雨の時期に相対湿度が70%を超す割合が高くなっていることが示されている。
高湿度状態の環境と疾患との相関関係を客観的に捉えた貴重なデータだ。

 

ダンプネスによる健康影響を受けないための「住まい」と「住まい方」

これまでの研究成果から、ダンプネスによる健康影響を受けないためには高湿度な状態を継続させないことが何よりも求められる、ということがわかっている。
特に呼吸器疾患の発症を促すカビやダニなどの微生物の繁殖を助長させないことが重要だ。

具体的な対策としては、
換気を十分に行うこと、洗濯物を干すなどの“室内で湿度を発生するような住まい方”を極力避ける、室内の湿度が高い場合には除湿機を運転する、などが提言されている。*

市販の温湿度計などを活用し、40%~60%といわれる適正湿度に室内を保つことがポイントになる。
(参照:前回の記事『子どもの疾病に住まい環境が影響を!?』

また、新築を検討したり既存住宅のリノベーションを計画する際などには、家全体の換気計画についてもしっかりと検討することが大切だ。間取りやデザインだけにとらわれず、健康的な室内空間を実現できるかという点にも目を向けていきたい。

 
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明瞭な四季の移ろいを愉しむことができる日本。
梅雨は梅雨で趣のある季節ではあるが、ジメジメした時期を迎えるにあたって、高湿度な室内環境をそのままにしておくことのリスクについては、改めて意識を向ける必要がありそうだ。

カビやダニを発生させないように湿度制御を上手に行いながら、健康的な室内環境のもとで梅雨の時期を乗り越えたいところだ。

 

*資料・データ出典 / 『健康に暮らすための住まいと住まい方エビデンス集』
(健康維持増進住宅研究委員会/健康維持増進住宅研究コンソーシアム 編著)