断熱改修工事というのは、「広範囲にやればやるほど」「お金をかければかけるほど」その効果は高くなるのだろうか?
断熱改修の規模によって、その効果にはどのくらいの違いが出るの?
そんな素朴な疑問に答えてくれる一つの研究成果を紹介する。

 

改修範囲が広いほど室内は暖かくなる?

基本的には答えは “Yes” だ。
では、手をかける範囲によって室温の変化にどれだけの差が出るのか?
そんな興味深い研究の成果が発表されている。

以下、日本サステナブル建築協会『住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査
第5回報告会』で発表された研究成果を紹介したい。

 

まずは断熱改修を行った範囲に基づき、2つのグループに分ける。

1つ目は、「開口部のみ」を断熱改修したグループ。
(いわゆる窓や玄関等の開口部だけを断熱化したもの)
2つ目は、「開口部」+「α」 で、
開口部の他、天井や壁、床などの外皮を一箇所以上断熱改修したグループだ。

 

 

この2つのグループ別に断熱改修前後の室内温度を比較した結果が以下のとおり。
※断熱改修前後で外気温が異なるため、外気温5℃の場合の最低室温を算出して分析に使用。

 

【戸建住宅の場合】

 

【共同住宅の場合】

 

共同住宅の方がその違いが明確に出ているが、
より広範囲の断熱改修を行うほど室温の上昇量が大きい、という可能性が高いことがわかる

※寝室と脱衣所でも同様に調査した結果、同じ傾向を示している。

 

改修費用によって室内温度の上昇量に違いは出るのか?

では、改修費用によって断熱効果に何らかの違いが生まれるのだろうか?
施工範囲(規模)によってかかる費用はもちろん変わるので、
ここでは1㎡あたりの改修費用によって2つのグループに分けて比較している。

いわば “改修の質” による比較と捉えられるかもしれない。
「㎡あたり10,000円未満のグループ」と、もう1つが「㎡あたり10,000円以上のグループ」だ。

 

【戸建住宅の場合】

 

【共同住宅の場合】

 

断熱改修面積に対してより多くの費用を投じるほどに室温上昇量が大きくなる、という可能性が
示された。ここでも特に共同住宅での効果の差が大きい

※寝室と脱衣所でも同様に調査した結果、同じ傾向を示している。

 

広範囲の断熱改修を行い、また、多くの予算を投じることで室温の暖かさはより叶えられる。
当たり前だと怒られるかもしれない。
しかし、この「当たり前」のように思われることが “実証” された意義は大きい

とはいえ、たくさん壊して多くの部位に手をかけ、たくさんのお金を闇雲にかけるのが良いかという単純な問題ではない。ここが非常に重要だ。
ここを履き違えると、無駄に費用を投じ、その割に大した効果が得られなかったなどという結果につながってしまう。
しっかりとした住宅検診のうえで、弱い部分を効率的に補強して家全体の性能向上を目指すという姿が、費用対効果の点においても、求められる本筋なのだろう。

 
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詳細な住宅属性別の分析や、住む人の生活習慣を考慮した解析など、さらなる研究の展望が広がっているという。
断熱改修工事の効果、特にその質の重要性に一層光が当てられることになるのではないだろうか。
今後のさらなる研究成果に期待したい。