「環境が人のこころにどのような影響を与えるのか」というのは、非常に興味深いテーマである。
今回は「住まい環境とこころの病気」についての研究と、得られつつある知見について紹介する。

 

これまでもあった心理学的なアプローチ

“住まいとこころの関係”というと、「環境心理学的なアプローチ」はこれまでもあった。
「環境心理学」の領域は、環境刺激と心理的反応、空間環境の認知、災害と環境問題など多岐にわたるが、こと“住まい”に関する点においては、光や音、雰囲気や場所という環境要素が、こころにどのような影響を与えるのか、というような内容が一つのテーマとなっている。
一例をあげると、 “自分らしい住まいをデザインできることで、心理的安定がもたらされる” であるとか、“子ども部屋(一人になれる場所)を持つことは、子どもの自我の確立に役立つ”というような、住まい環境に関する様々な知見が得られている。

※環境心理学は,第二次大戦後の都市再開発と経済成長とともに深刻化した種々の環境問題に対処すべく,心理学,建築学,社会学,地理学,人類学等の人間諸科学の学際的研究領域として発展してきたもの。(環境心理学会Webサイトより)

 

住まいの暖かさがこころに与える影響は?

今回取り上げるのは、上記の「環境心理学」の領域とはまた違ったアプローチであり、ずばり「物理的な室温」と「こころの病気」との関連性を探る研究成果である。

(一社)日本サステナブル建築協会主催の「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 -第4回報告会-(令和2年2月18日)」において、その研究結果が報告された。
2,223世帯3,973名のアンケート調査の結果を分析したところ、「室温が14℃ 未満だと、こころの病気に対するリスクが高まる」という結論が導き出されたという。

床上1mの居間室温が14℃以上のグループと14℃未満のグループに分けて、うつやその他のこころの病気である確率を算出したところ、14℃以上のグループよりも14℃未満のグループが約1.7倍こころの病気である確率が高い、という結果が得られたのだ。
これからも引き続き調査が必要な内容ではあるものの、一つの可能性を示すには十分な調査結果ではないだろうか。

 

室温が血圧に及ぼす影響とそれに起因する心疾患との関連、また、アレルギー性疾病との関連などについては既に多くの研究が行われ、その得られつつある知見は国土交通省からも何度かリリースされている。
今回の研究成果である「室温とこころの病気との関連」については、まだこれからの研究テーマであろうかと思うが、その有意性が証明されれば、住環境が果たす役割にまた一つ大きなテーマがプラスされるのではないだろうか。

 

心疾患のリスクを減らすだけではなく、精神的な安定をも得られるとすれば、暖かな住まいのメリットは計り知れない。
今後の研究成果に期待したい。